ピアノのペダルが3本になったのは、いったいいつからなのでしょうか。
結論からいうと、世界中のピアノがある1年を境に一斉に3本になったわけではなく、1844年のソステヌート機構の登場と、1874年のSteinway & Sonsによるtone-sustaining pedalの特許化が重要な節目になります。
日本では、ヤマハU1系で1965年以降に3本ペダルを備えたモデルが確認されていますが、これを日本全体の開始年と断定することはできません。
この記事では、1844年と1874年の違い、日本のピアノが3本化した時期の目安、古い2本ペダルが異常とは限らない理由、初心者がペダルを使い始めるタイミングまで、確認できる資料をもとに分かりやすく整理します。
ピアノのペダルが3本になったのはいつから?結論は1844年と1874年が重要な節目
ピアノのペダルが3本になった時期を調べると、1844年と1874年という2つの年がよく登場します。
ただし、「1874年から世界中のピアノが一斉に3本ペダルになった」という意味ではありません。
現在の3本ペダルにつながる歴史は19世紀に段階的に形成されており、1844年はソステヌート機構が公に示された重要な年、1874年はSteinway & Sonsがtone-sustaining pedalを米国で特許化した重要な年として整理すると分かりやすいです。
| 年 | 出来事 | 「3本ペダルの歴史」での意味 |
|---|---|---|
| 1844年 | Boisselot & Sonsがソステヌート機構を公に示したとされる | 現代の3本ペダルにつながる重要な原型の登場 |
| 1874年 | Steinway & Sonsがtone-sustaining pedalを米国で特許化 | 現代的な3本ペダルの普及につながる重要な技術的節目 |
この2つの年は意味が違うため、「ピアノのペダルは何年から3本になったのか」を1つの西暦だけで答えると誤解が生まれやすい点に注意が必要です。
1844年はソステヌート機構が公に示された年
3本目のペダルの歴史をたどるうえで、最初に押さえておきたいのが1844年です。
Joseph Banowetzさんの『The Pianist’s Guide to Pedaling』では、フランスのBoisselot & Sonsが1844年のパリ博覧会で、特定の音だけを保持できる真正なソステヌート機構を初めて公に示したとされています。
ソステヌートとは、簡単にいうと「選んだ音だけを伸ばしておくための仕組み」です。
通常の右側にあるダンパーペダルは、踏むと広い範囲の音を響かせ続けるため、特定の低音や和音だけを残し、その後に弾く音は濁らせたくない場面では扱いにくいことがあります。
そこで、鍵盤を押さえた状態でペダルを踏み、その瞬間に選ばれていた音だけを持続させるという考え方が生まれました。
たとえば、低いドの音だけを長く響かせながら、その上で別の音を自由に弾きたい場面を想像すると分かりやすいでしょう。
右のダンパーペダルでは部屋全体の照明を一度に点灯するように響きが広がりますが、ソステヌートは必要な場所だけにスポットライトを当てるような役割を持っています。
ただし、1844年の時点で現在見かけるピアノが一斉に3本ペダルへ変わったわけではありません。
同資料では、その後1860年にDebain、1862年にMontalも類似した機構を製作したものの、広く普及するまでには至らなかったとされています。
そのため1844年は「3本ペダルが世界標準になった年」ではなく、現在の3本目につながる重要な仕組みが公に示された年と考えるのが適切です。
1874年はSteinway & Sonsがtone-sustaining pedalを特許化した年
もう1つの重要な年が1874年です。
Smithsonian Institutionに保存されているWilliam Steinwayさんの資料では、Steinway & Sonsの主要な発明として、1874年10月27日の「tone-sustaining pedal」が記録されています。
つまり1874年は、Steinway & Sonsが音を選択的に持続させる仕組みを重要な技術として特許化したことを公式資料で確認できる年です。
この事実から、1874年が「3本ペダルの始まり」と紹介されることがあります。
しかし、すでに1844年にはBoisselot & Sonsによるソステヌート機構の例があるとされているため、1874年を「世界で初めて3本ペダルが発明された年」と断定するのは正確ではありません。
整理するなら、1844年をソステヌート機構の歴史上の重要な起点、1874年をSteinway & Sonsによる実用化と普及につながった重要な節目として見るのが自然です。
| よくある理解 | より正確な整理 |
|---|---|
| 1874年に3本ペダルが初めて発明された | 1844年にはソステヌート機構が公に示されたとする記録がある |
| 1874年から世界中のピアノが3本になった | メーカーや地域によって採用時期は異なり、段階的に普及したと考えられる |
| 3本目はすべてソステヌートである | アップライトでは中央がマフラーなど別の機能になる場合がある |
特に大切なのは、「技術が登場した年」と「一般的なピアノに普及した時期」は別の話だということです。
新しい機能が発明されても、すべてのメーカーが同じ年に採用するわけではなく、地域や製品によって普及の速度は変わります。
スマートフォンの新機能が登場しても、その日から世界中の端末が同じ仕様になるわけではないのと少し似ています。
ピアノの3本ペダルも同じように、歴史の中で少しずつ広がっていったと考えると理解しやすいでしょう。
「ピアノのペダルが3本になったのはいつから?」への最も安全な答えは、1844年に原型となるソステヌート機構が登場し、1874年にSteinway & Sonsが重要な機構を特許化したものの、3本ペダルへの移行はメーカーや地域ごとに段階的だった、となります。
なお、現在の3本ペダルでも、中央のペダルが必ずソステヌートとは限りません。
ヤマハのアップライトピアノ資料では、中央ペダルは機種によってソステヌートまたはマフラーになると説明されているため、ペダルが3本あるだけで機能まで同じだと考えない方がよいでしょう。
日本のピアノが3本ペダルになったのはいつ頃?
日本の家庭でよく見かけるピアノについても、「いつから3本ペダルになったの?」と気になりますよね。
調査資料から確認できる具体例として、ヤマハU1シリーズでは1965年以降のU1Eに3本ペダルと弱音装置を備えたモデルがあったとされています。
ただし、この1965年を「ヤマハのすべてのピアノ」や「日本のすべてのピアノ」が3本になった年と考えることはできません。
| 確認できること | 断定できないこと |
|---|---|
| ヤマハU1系では1965年以降のU1Eに3本ペダルの例がある | ヤマハ全製品が1965年から3本になった |
| 日本の家庭用ピアノでも1960年代半ばには3本ペダルのモデルが存在したとみられる | 日本で初めて3本ペダルが登場した年は1965年である |
| 古い年代には2本ペダルのピアノも存在する | 2本ペダルなら部品が欠けている、または故障している |
ヤマハU1系では1965年以降に3本ペダルのモデルが確認されている
日本のピアノで具体的な年代を考えるとき、参考になるのがヤマハU1シリーズです。
中古ピアノ専門店のグランドギャラリーは、ヤマハU1Eについて「1965年以降のモデルで、ペダルが3本になり、弱音装置が搭載された」と説明しています。
この情報から、少なくともヤマハの代表的な家庭用アップライトピアノであるU1系では、1960年代半ばに3本ペダルを備えたモデルが存在していたと考えられます。
現在の感覚では3本ペダルが当たり前に見えるため、昔からずっと同じ形だったように感じるかもしれません。
しかし実際には、ピアノのペダル仕様もモデルチェンジの中で少しずつ変化してきました。
自動車の装備が世代ごとに増えていくのと同じように、ピアノも時代に合わせて機構や使い勝手が改良されてきたと考えるとイメージしやすいでしょう。
なお、アップライトピアノの中央ペダルは、グランドピアノのソステヌートと同じ機能とは限りません。
ヤマハのアップライトピアノ公式資料では、中央ペダルは機種によってソステヌートまたはマフラーになると説明されています。
マフラーペダルは、ハンマーと弦の間にフェルトを入れて音量を抑えるための仕組みです。
そのため、日本の家庭用アップライトで「3本になった」という話では、単純にソステヌートが追加されたというより、家庭で練習しやすくする弱音機能を含めた3本構成になっているケースも考える必要があります。
日本の家庭用ピアノについて具体的な目安を挙げるなら、ヤマハU1系では1965年以降に3本ペダルのモデルが確認されている、と覚えておくと分かりやすいです。
1965年をヤマハや日本のピアノ全体の開始年とは断定できない
ここで特に注意したいのが、1965年という数字の扱いです。
1965年はヤマハU1Eという特定シリーズについて確認できる目安であり、「ヤマハの全ピアノが1965年から3本になった」と断定できる資料ではありません。
今回の調査では、ヤマハ公式の歴史資料から「ヤマハ製ピアノで初めて3本ペダルを採用したモデルと年」までは確認できませんでした。
同じ理由で、「日本のピアノは1965年から3本ペダルになった」と一般化することも避けた方が安全です。
メーカーによって設計やモデルチェンジの時期は違うため、あるシリーズの変更年を日本全体の基準にすることはできないからです。
これは、あるメーカーのテレビが1965年に新機能を採用したからといって、日本中のテレビが同じ年にその仕様へ変わったとは言えないのと同じです。
中古ピアノを見ていて2本しかペダルがない場合も、それだけで「1本なくなっているのでは」と判断する必要はありません。
3本目のペダルはメーカーや地域、年代によって段階的に普及してきたため、古いピアノがもともと2本ペダル仕様である可能性があります。
そのため中古ピアノを購入するときは、ペダルの本数だけではなく、メーカー名、型番、製造年代、中央ペダルの機能まで確認することが大切です。
| 中古ピアノで確認したい項目 | 確認する理由 |
|---|---|
| メーカー・型番 | モデルごとにペダル仕様が異なるため |
| 製造年代 | 年代によって2本仕様と3本仕様が混在する可能性があるため |
| 中央ペダルの機能 | ソステヌートではなくマフラーの場合があるため |
| ペダルの動作状態 | 本数と故障の有無は別問題だから |
つまり、日本のピアノについては「1965年ごろから一斉に3本になった」のではなく、少なくともヤマハU1系では1965年以降に3本ペダルのモデルが確認でき、メーカーや機種ごとに段階的に普及したと考えるのが適切です。
初心者はピアノのペダルをいつから使う?
「ピアノを始めたら、ペダルはいつから使えばいいの?」と迷う初心者は少なくありません。
結論からいうと、何歳から、あるいは習い始めて何年目から使うべきかという統一された公式基準は確認されていません。
初心者向けの解説では、3本すべてを一度に覚えるのではなく、まず使用頻度の高い右側のダンパーペダルから扱うケースが一般的だとされています。
| 疑問 | 確認できる範囲での答え |
|---|---|
| 何歳からペダルを使う? | 統一された公式年齢は確認されていない |
| 習い始めて何年目から? | 「○年目から」という公式基準は確認されていない |
| 最初はどのペダルを使う? | 初心者向け解説では右のダンパーペダルから扱う例が多い |
| 最初から3本全部を覚える? | 3本を同時に使い始める必要があるという公式基準は確認されていない |
最初に使うことが多いのは右のダンパーペダル
初心者が最初に覚えるペダルとしてよく挙げられるのが、右側にあるダンパーペダルです。
初心者向けのピアノ解説では、3本のうちダンパーペダルが最も使用頻度が高く、最初に習うペダルとして説明されています。
ダンパーペダルは、踏んでいる間に弦の振動を持続させ、鍵盤から指を離したあとも音を響かせるために使います。
たとえば同じメロディーでも、ペダルを使わないと一つひとつの音がはっきり分かれやすく、適切にダンパーペダルを使うと音同士がなめらかにつながって聞こえます。
絵にたとえるなら、鍵盤だけで弾く演奏が一本ずつ線を描く作業だとすると、ダンパーペダルは線と線の間を自然な色でつなぐような役割です。
ただし、踏めば踏むほどきれいに聞こえるわけではありません。
ダンパーペダルを長く踏み続けると複数の音が重なり、響きが濁ることがあるため、鍵盤とペダルを連動させる練習が必要です。
そのため初心者の場合は、3本の名前と機能をまとめて暗記するより、まず右ペダルを使ったときに音がどう変化するかを耳で確かめる方が理解しやすいでしょう。
最初の一歩としては、使用頻度の高い右のダンパーペダルから覚えると、ペダルの効果を実感しやすいです。
何歳・何年目から使うという統一された公式基準はない
「小学何年生から」「習い始めて1年後から」といった明確な数字を知りたい人もいるでしょう。
しかし今回の調査では、年齢やピアノ歴を基準にして「この時点から3本のペダルを使うべき」と定めた統一的な公式基準は確認できませんでした。
ダイヤモンド・オンラインの記事では、著者自身の経験として、ピアノ教室で習い始めてすぐにはペダルを使わなかったという趣旨の説明があります。
ただし、これは個人の学習経験であり、すべてのピアノ学習者に当てはまる開始基準ではありません。
「初心者は必ず○歳から」「習い始めて○年目から」と数字だけで決めつけるのは避けた方がよいでしょう。
ペダルを使う段階は、取り組んでいる曲や教材、演奏技術などによって変わる可能性があるためです。
また、3本すべてを同じタイミングで習得する必要があるという公式基準も、今回の調査では確認されていません。
右のダンパーペダルはよく使われる一方、中央のソステヌートペダルはピアノの種類によって機能そのものが異なる場合があります。
アップライトピアノでは、中央ペダルがソステヌートではなく練習用のマフラーになっている機種もあるためです。
| 判断方法 | 考え方 |
|---|---|
| 年齢だけで決める | 統一された公式基準は確認されていない |
| ピアノ歴だけで決める | 「○年目から」という統一基準は確認されていない |
| 取り組む曲や学習内容に合わせる | 必要なペダルから順番に覚える考え方が現実的 |
| 3本すべてを同時に覚える | その必要があるという公式基準は確認されていない |
初心者がペダルを使い始める時期は一律の年齢や年数で決めるものではなく、まず右のダンパーペダルなど、演奏で必要になった機能から段階的に覚えていくと考えるのが分かりやすいです。
まとめ|ピアノの3本ペダルは19世紀に生まれ、段階的に普及した
ピアノのペダルが3本になった時期は、世界共通の1年だけで答えられるものではありません。
歴史を分かりやすく整理すると、1844年と1874年が重要な節目で、日本の家庭用ピアノでは1960年代半ばに3本ペダルの具体例が確認されています。
「いつから3本になったのか」を知りたいときは、発明された時期と各メーカーへ普及した時期を分けて考えるのがポイントです。
| 時期 | 確認できる内容 | 覚え方 |
|---|---|---|
| 1844年 | Boisselot & Sonsがソステヌート機構を公に示したとされる | 3本目につながる仕組みの重要な起点 |
| 1874年 | Steinway & Sonsがtone-sustaining pedalを米国で特許化 | 実用化と普及につながる重要な節目 |
| 1965年以降 | ヤマハU1Eに3本ペダルと弱音装置を備えたモデルがあったとされる | 日本の家庭用アップライトにおける具体例 |
1844年については、Joseph Banowetzさんの『The Pianist’s Guide to Pedaling』で、Boisselot & Sonsがパリ博覧会に真正なソステヌート機構を提示したとされています。
1874年については、Smithsonian Institutionに保存されているWilliam Steinwayさんの資料から、Steinway & Sonsが10月27日にtone-sustaining pedalの米国特許を取得したことを確認できます。
そのため、「1874年に世界で初めて3本ペダルが発明され、その年からすべてのピアノが3本になった」と考えるのは正確ではありません。
メーカーや地域によって採用時期には差があり、3本ペダルは段階的に普及したと考えるのが自然です。
日本のピアノについては、中古ピアノ専門店のグランドギャラリーがヤマハU1Eを1965年以降のモデルとして紹介し、3本ペダルと弱音装置を備えていると説明しています。
ただし、これはヤマハU1系の具体例であり、1965年をヤマハ全製品や日本のピアノ全体が3本になった年と断定することはできません。
古いピアノにペダルが2本しかなくても、それだけで部品が欠けている、あるいは故障しているとは判断できません。
製造年代やメーカー、型番によってもともとの仕様が異なる可能性があるため、中古ピアノではペダルの本数だけで状態を判断しないことが大切です。
また、現在の3本ペダルでも中央の機能はすべて同じではありません。
ヤマハのアップライトピアノ公式資料では、中央ペダルが機種によってソステヌートまたはマフラーになると説明されています。
結論として、ピアノの3本ペダルは19世紀半ばから形づくられ、1844年と1874年という技術的な節目を経ながら、メーカーや地域ごとに少しずつ普及していったと理解するのが最も分かりやすいでしょう。


